第三の美徳

デイヴィッド・ブルックス著『あなたの人生の意味』の書き出しはこうだ。

“私は最近よく考えることがある。人間の美徳には大きく分けて二つの種類があるのではないかということだ。一つは履歴書向きの美徳、もう一つは追悼文向きの美徳。前者は文字どおり、履歴書に列挙すると見栄えのするような美徳だ。就職戦線において自分を有利にしてくれ、他人から見てわかりやすい成功へと導いてくれるような能力。追悼文向きの美徳はもっと奥が深い。あなたの葬式の時、集まった人たちの思い出話の中で語られる美徳だ。それは、あなたという人間の核として存在しているものに違いない。親切、勇敢、正直、誠実……何と言われるだろうか。生前、人とどういう関係を築いていたかによっても変わってくるだろう。”

近年ではここにもう一つ、「ネット向きの美徳」というのが入るのではないだろうか。

口当たりが良くネット上で共感を得られやすい、マイノリティーをきどったシニカルな視点からの、先進的に見せつつもその実、ひとりよがりをカモフラージュしただけの美徳だ。現実社会における有効性、正当性、妥当性は問題ではない。共感をいかに得られるかがそこでは最重要とされている、それはネット上のエートスと言い換えることもできよう。